傷病手当金はいつまで?通算1年6か月・復職・退職後を整理

目次

結論|傷病手当金は同一の傷病について通算1年6か月

傷病手当金の支給期間は、同一の傷病について支給を開始した日から通算1年6か月です。
途中で復職した期間があれば、その期間を単純に「受給期間」として消費する仕組みではありません。
一方、再休職や退職後は条件によって取扱いが変わるため、「最初の支給日」「実際に支給された期間」「退職日の状態」を分けて確認することが大切です。

はじめに

「傷病手当金は1年6か月まで」と聞いても、実際に休職すると疑問が次々に出てきます。

「半年休んで一度復職したら、残りは1年ですか?」
「同じ病気でまた休職したら、もう一度3日待つのでしょうか?」
「退職したら、その日で傷病手当金も終わりますか?」

これらはすべて、単に「1年6か月」という数字だけでは答えられません。

この記事では民間保険の説明を先にせず、まず傷病手当金そのものの支給条件・期間・復職・再休職・退職後を順番に整理します。

傷病手当金はいつから支給される?

最初に確認するのは「連続する3日間の待期」

傷病手当金は、病気やケガで1日仕事を休めばすぐに支給される制度ではありません。

協会けんぽでは、業務外の病気やケガの療養のため仕事に就けず、連続する3日間を含んで4日以上仕事に就けなかった場合などを支給条件としています。

最初の連続3日間が「待期」で、条件を満たした場合、その後の4日目以降の休業日が支給対象になります。待期には有給休暇や土日・祝日などの公休日を含められる場合があります。

つまり、

休み始めた日=傷病手当金の支給開始日

とは限りません。

まずは勤務表やカレンダーを見ながら、

  • いつから休んだか
  • 連続3日の待期が完成したのはいつか
  • 最初に傷病手当金が支給された日はいつか

を分けて確認すると、その後の1年6か月を整理しやすくなります。

傷病手当金の対象になる基本条件

協会けんぽでは、主に次の条件が示されています。

  • 業務外の病気やケガの療養である
  • 仕事に就くことができない
  • 連続3日の待期を含み4日以上仕事に就けない
  • 休業期間について給与の支払いがない、または傷病手当金より少ない

給与が一部支払われている場合には、その内容によって傷病手当金との差額が支給される場合があります。

「会社を休んだ=必ず傷病手当金」というわけではないため、勤務先と加入している健康保険の両方で確認しましょう。

支給額は「手取り給与の3分の2」ではない

傷病手当金について「給料の3分の2」と説明されることがありますが、正確には標準報酬月額を基礎として計算します。

協会けんぽでは原則として、支給開始日前12か月間の各標準報酬月額を平均した額を基に1日当たりの支給額を算出します。
加入期間が12か月に満たない場合には別の計算方法があります。

したがって、生活費を考えるときは「普段の手取りの3分の2がそのまま入る」と決めず、実際の見込額を確認するのが安全です。

「通算1年6か月」はどう数える?

2022年以降は「暦で1年6か月」ではなく通算

現在の傷病手当金の支給期間は、同一の傷病について支給開始日から通算して1年6か月です。

ここで大切なのが「通算」という言葉です。

たとえば傷病手当金を6か月受給した後に復職し、その後、同一の傷病で再び休職して傷病手当金の支給対象になった場合、原則としてそれまでの支給期間と再休職後の支給期間を合わせて1年6か月までとなります。

以前のように、支給開始日から暦の上で1年6か月が経過すれば終了するという考え方とは異なります。

たとえば「6か月受給→3か月復職→再休職」なら?

分かりやすく単純化して考えてみます。

  1. 傷病手当金を6か月受給
  2. 3か月間復職
  3. 同一傷病で再び休職

この場合、復職していた3か月を傷病手当金の支給期間として単純に消費するわけではありません。

同一傷病として扱われ、その他の支給条件を満たす場合には、それまで受給した期間と再休職後の支給期間を通算して1年6か月まで支給される考え方になります。

ただし、実際に「同一傷病」に当たるかどうかを本人だけで判断しないことが重要です。

手元で確認したい4つの資料

期間を確認するときは、記憶だけで計算するより次の資料を並べた方が確実です。

  • 傷病手当金の支給決定通知
  • 休職・復職日が分かる勤務先の書類
  • 給与明細
  • カレンダーまたは勤務表

「病気になった日」ではなく、実際に傷病手当金の支給が始まった日と、支給された期間を確認するのがポイントです。

復職後に同じ病気で再休職したらどうなる?

同一傷病なら残っている支給期間を確認する

一度復職したからといって、傷病手当金の支給期間が必ずゼロから再スタートするわけではありません。

厚生労働省「こころの耳」では、同一の疾病または負傷などによって再び休職する場合、支給開始日から通算1年6か月の範囲内であれば支給対象になり得ることが示されています。

「前回半年もらったから、今回はあと1年」と単純計算する前に、保険者へ残りの支給期間を確認しましょう。

同一傷病による再休職なら待期3日を再び作るとは限らない

同じ一連の傷病による再休職として扱われ、支給期間が継続しているケースでは、新たに3日間の待期を設けず支給される場合があります。

「こころの耳」でも、同一傷病による再休職で通算1年6か月の範囲内であれば、改めて3日間の待期期間を設けず支給される考え方が示されています。

ただし、傷病の同一性や治癒の判断は個別になります。

同じ病名でも「別の傷病」と判断される場合がある

ここは傷病手当金で特に分かりにくい部分です。

同じ病名で再び休職した場合でも、一度治癒したと認められ、相当期間通常どおり勤務した後の再発などでは、別の傷病として扱われる可能性があります。

反対に、自分では「治った後の再発」と思っていても、保険者から一連の傷病と判断される場合も考えられます。

厚生労働省「こころの耳」も、最終的な判断は保険者へ確認する必要があると説明しています。

病名だけで自己判断せず、

前回の支給終了時の状態・復職期間・その後の症状・就業状況

を確認できるようにしておきましょう。

退職後も傷病手当金は受け取れる?

退職しただけで直ちに終了するとは限らない

傷病手当金を受給中に退職した場合でも、一定の条件を満たせば、資格喪失後も残りの支給期間について継続して受けられる場合があります。

協会けんぽでは、主に次の条件を示しています。

  • 退職日までに継続して1年以上の健康保険の被保険者期間がある
  • 資格喪失時に傷病手当金を受けている、または受けられる状態である

などです。

したがって、

「会社を辞めたら翌日から傷病手当金もゼロ」

と一律に考える必要はありません。

退職日は特に注意する

退職後の継続給付を考える場合、退職日の状態は重要です。

協会けんぽは、退職日に出勤した場合、資格喪失後の継続給付の条件を満たさないため、退職日の翌日以降の傷病手当金を支給できないと案内しています。

退職日を迎える直前に、

「体調が少し良いから最後だけ出勤しよう」

と自己判断する前に、勤務先と健康保険へ確認しておいた方がよいでしょう。

退職後に一度働ける状態になった場合にも注意

在職中の復職と、退職後の資格喪失後継続給付では考え方が同じとは限りません。

協会けんぽでは、資格喪失後に傷病手当金の継続給付を受けている方が、一度仕事に就くことができる状態になった場合、その後再び仕事に就けなくなっても傷病手当金は支給されないと案内しています。

退職後の受給については「残り期間があるから、いつでも再開できる」と考えないことが重要です。

自分の残り期間を確認する5ステップ

傷病手当金について迷ったら、次の順番で整理すると分かりやすくなります。

1.最初の支給開始日を確認する

傷病手当金の支給決定通知などから、最初に支給対象となった日を確認します。

2.実際に支給された期間を確認する

途中で復職した期間がある場合は、休職期間と復職期間を分けます。

3.再休職なら同一傷病かを確認する

自分だけで判断せず、加入している健康保険へ確認します。

4.退職予定なら退職前に確認する

被保険者期間、退職日の就労状況、資格喪失時点で支給条件を満たしているかを確認します。

5.支給終了後の生活費を確認する

ここまで確認して初めて、傷病手当金終了後も働けない場合の生活費を考えます。

今回の記事で最も大切なのは、保険を先に選ぶことではなく、公的保障がいつまで続くのかを先に把握することです。

40代女性のうつ病と医療保険加入で損しない選び方ガイド完全入門編では、うつ病による休職経験がある場合の医療保険・家計の考え方を整理しています。
既存記事では傷病手当金は休職時の補助論点であり、本記事とは役割を分けています。

また、医療費と生活費を分けて備える考え方は、40代独身女性の『もしも』の時の不安に備える医療保険と所得補償Web完結ガイドで確認できます。

民間の所得補償そのものを知りたい方は、『病気やケガで』で収入が途絶えたときに、お給料のように受け取れる保険はないの~50代女性の心配を所得補償保険で解決をご覧ください。
本記事では所得補償保険の商品説明を広げず、傷病手当金の制度理解を主目的とします。

傷病手当金の支給期間と退職後の条件を確認したうえで、支給終了後も生活費に不足が残りそうな場合は、収入減への備えを確認できます。

よくある質問

Q1.傷病手当金は最大1年6か月ですか?

同一の傷病について、支給開始日から通算1年6か月が基本です。
途中で復職した期間がある場合は、実際の支給期間を通算して考える仕組みになっています。

Q2.半年間傷病手当金を受けて復職したら、残りは1年ですか?

同一傷病として扱われ、その他の支給条件を満たす場合には、支給済み期間を通算して残りの支給可能期間を考えます。ただし、実際の支給日数や傷病の同一性について加入先へ確認してください。

Q3.復職後に再び休職したら、また待期3日が必要ですか?

同一傷病による一連の再休職として扱われ、通算支給期間内であれば、新たに3日間の待期を設けず支給される場合があります。
傷病の同一性などは個別判断になるため保険者へ確認してください。

Q4.退職後も傷病手当金を受け取れますか?

一定の被保険者期間があり、資格喪失時点で傷病手当金を受けている、または受けられる状態などの条件を満たせば、残りの期間について継続給付を受けられる場合があります。

Q5.退職日に出勤しても大丈夫ですか?

退職後の継続給付を受ける予定がある場合は特に注意が必要です。
協会けんぽでは、退職日に出勤した場合、資格喪失後の継続給付を受ける条件を満たさないと案内しています。

まとめ|「いつまで?」は支給開始日・復職・退職の3点で確認する

傷病手当金は、同一の傷病について支給開始日から通算1年6か月が基本です。

ただし、自分の残り期間を知るには「1年6か月」という数字だけでは足りません。

①最初の支給開始日
②実際に支給された期間
③途中で復職した期間
④再休職が同一傷病に当たるか
⑤退職する場合の資格喪失時の状態

を順番に確認しましょう。

まず公的保障を正確に把握し、その後に支給終了後の生活費を考える。
この順番なら、必要以上に不安を広げず、本当に不足する部分だけを整理できます。

傷病手当金をいつまで受けられるか整理しても、長期療養時の生活費に不足が残る方は、その不足部分に備える保障内容を確認できます。

個人情報保護のため、一部の情報を変更しています。

本記事は保険に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の保険会社や商品を推奨するものではありません。具体的な商品内容、加入条件、保障・補償範囲は、契約概要、注意喚起情報、約款等をご確認ください。

参考資料・出典

執筆者プロフィール

(株)ライフ・アート谷口
(株)ライフ・アート谷口
三重県鈴鹿市の保険代理店(株)ライフ・アート 代表取締役。
大学卒業後、国内大手生命保険会社へ総合職として入社し主に教育関連職や拠点管理職を歴任。その後、独立し(株)ライフ・アートを設立。